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海での救助
夏になると気候や海が穏やかになり、より多くの人が庇護を求め、命の危険を顧みず地中海を渡って欧州を目指す。今年、その数は過去に類を見ないほどの勢いで増しており、今年6月、1日平均750人以上もの人々が地中海で救助された。
6月下旬、写真家アルフレッド・ダマトはイタリア海軍船に乗り込み、ヘリコプターでの船の捜索や、人々を救助船から本船へ乗せ、イタリア本土へ向かうといった、救助活動の一部始終を記録した。
わずか6時間の間に救助隊は4隻の過密状態の船から1171人を救助した。半数以上がシリアでの紛争から逃れてきた人々で、家族など集団で避難している。その他にもエリトリアやスーダン、パキスタン、バングラデシュ、またソマリアなどから避難してくる人もいる。写真からは自らの命を危険にさらしてまで故郷を離れざるを得なかった人々の姿がうかがえる。
ジハンのストーリー
ジハン(34歳)はシリアでの紛争を受け家族の命を守るためすべてをかけて避難を決意した一人だ。ジハンが他の大勢と異なるのは目が見えないことだ。
ジハンは9ヶ月前、夫であるアシュラフ(35歳)とともにダマスカスから逃れた。アシュラフも視力を失いつつある。ジハンとアシュラフは息子2人を連れてほかの40人と一緒に船に乗り、トルコを目指し地中海を渡った。トルコまでは8時間で着けると信じていたが、生きて辿りつける保証はなかった。
45時間船に揺られ家族が辿りついたのは、目的地から大きくそれたエーゲ海のギリシャのミロス島だった。その後は誰からの支援も受けず何とか自分たちでアテネへと向かった。
アテネに到着した家族は警察に4日間拘留された。アテネと他の3つの都市には行かないよう告げられ、家族は行くあてを失ってしまった。
その頃には疲弊していた家族は、二手に分かれて行動することにした。夫アシュラフは庇護を求め北方へと歩みを進め、ジハンは息子2人と首都から車で1時間かかるラブリオンの避難場所へと向かった。
現在ジハンは5歳と7歳の息子と一緒にとても狭い部屋に暮らしながら、デンマークで難民認定された夫との再会を待っている。
ジハンは子どもたちの教育について心配しているが、心配事はそれだけではない。すぐに角膜移植の手術を受けないと、左目が失明してしまう。
「私たちは生きるため、そしてこの状況を少しでも理解してくれる人に出会えるのではないかという思いを持ってここに避難して来ました。でも、実際に理解してくれる人はほんの一握りだと知ってとても辛い。」と彼女は悲しそうに言う。
チャド南部へ逃れた中央アフリカ難民:食糧不足に直面
2014年1月から国連WFPは資金不足によりチャド南部にある難民キャンプへ送る食糧の60%をカットせざるを得ない状況に陥っている。
その主な原因は難民数が増え続けていることであり、2014年の初めから新たに1万4000人が中央アフリカ共和国からチ
ャド南部へと逃れた。難民の多くが数ヶ月間わずかな食糧と水で荒れた密林地帯を徒歩で避難し、病気、栄養失調、また極度の疲労にさいなまれチャドにたどりつく。中央アフリカからチ
ャド南部に避難した難民は、すでに何年も避難生活を続けている人に加え、9万人に増大した。
今回の危機が起こる前に避難してきた難民は農業や仕事を通じてある程度自立し、食糧不足を補うことができている。しかし最近自国での暴力から逃れてきた難民はより厳しい現実に直面している。WFPは栄養失調改善のための補助給食計画を打ち切らざるを得なくなったため、今後は難民の中でも特に子どもは生死の危機に直面する。 WFPはアフリカの難民の食糧支援を続けるため1億8600万米ドルの支援金が必要であると訴えている。また、UNHCRはアフリカの難民を対象に食糧・栄養改善支援に充てる7800万米ドルの予算を補うための緊急支援を要請している。
この写真はフォトジャーナリスト、コレンティン・フォーレン (Corentin Fohlen)がチャド南部に避難している難民の苦境と日々の生活を伝
えるために撮影された。
チャド:食糧不足で搾取や暴力にさらされる女性と子ども
資金不足により、国連WFPはチャドにある難民キャンプへ送る食糧の60%をカットせざるを得ない状況に陥っている。これによってチャド東部の13ヶ所のキャンプで生活するスーダン難民の一日の摂取カロリーが2100キロカロリーから850キロカロリーに低下した。地元の診療所は栄養失調の急増を指摘しており、アブ・ナバック難民キャンプでは栄養失調に苦しむ人の割合が19.5%に上るという。国連WFPが今年末までアフリカでの食糧支援を続けるためには、1億8600万ドルの支援金が不可欠だ。
痩せた土壌、干ばつ、そして水不足に苦しむ東部では、南部に住む難民のように自分で穀物を育てることができない。このためこの地域に住む難民の女性たちは仕事を求めて近隣の町へ出かけていくが、それでも生活は厳しい。イリバという町では、50人もの難民の女性が屋外で寝泊りし、わずかな収入で買った食べ物を分け合って生活しているという。
また、なかには仕事の賃金を払わない雇用者や、家族を養うために売春をせざるを得なくなった女性や女の子もいる。
食糧不足は栄養面だけでなく、地域全体に悪影響をもたらす。働くために学校へ行けなくなった子どもや、わずかな食糧の一部を生活必需品や現金と交換する人もいる。地域で肉屋や整髪店などを営む人々にも影響が及んでいる。
WFPはチャド東部で24万500人のスーダン難民に対して食糧支援を行っている。難民の多くは何年にも渡る避難生活によって自立する機会を奪われ、外部からの支援なしでは生きていくことができない状況に陥っている。食糧不足は、すでに厳しい状況におかれている難民たちの生活をさらに圧迫している。