キヤノン、フォトグラファー山口 和人

©CANON.INC

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彼女は私がヨルダンで初めてカメラを向けた難民の少女です。

2013年9月、私はキヤノンがCSR活動の一環でサポートしている国連UNHCR協会のヨルダン難民キャンプ視察にフォトグラファーとして同行し、記録撮影を行いました。

多い時には1日4千人が登録に訪れたというレジストレーションセンター。この日も午前中は登録を待つ難民でごった返していたという待機所ですが、我々が訪れた遅い時間帯にはすでに静まり返っており1組の家族が不安そうに座っているだけでした。

自分の娘と同じ年頃の少女の大きく美しい目に引かれカメラを向けた瞬間、彼女は年相応のかわいらしい笑顔を浮かべました。
しかし、私がシャッターを押そうとした時には笑顔は消えてしまい、大きな瞳でまっすぐにカメラを見つめ返すだけになっていました。

「私は今笑ってはいけないのです。」

そう彼女が言っているかのようでした。

そのあと訪れたザータリ難民キャンプでは、カメラを向けるとはしゃぐ子どもたちのたくさんの笑顔に出会いました。
そんな子どもたちを撮影しながら、そして今でも、心の片隅にはファインダーの中から消えていく彼女の微笑みが引っ掛かっています。

彼女の、そしてヨルダンで出会った子どもたち全員の「本当に笑える日」が一刻も早く訪れることを願ってやみません。

 

キヤノン株式会社
渉外本部 広報メディア部
フォトグラファー 山口 和人


紛争によって引き裂かれた家族がいる。それは一家族でも多すぎる。

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