【アフリカ特集】職員インタビュー:難民と接すると人間の強さを感じる

中柴 春乃

UNHCRケニア ナイロビ地域事務所 第三国定住地域担当官

 

ケニア・ナイロビにあるUNHCRの地域事務所で、難民の再定住を担当しています。近年は特に、コンゴ民主共和国からの難民の第三国定住に奔走しています。

民兵や政府軍に住んでいた村を攻撃され、命からがら逃げて隣国に庇護を求めたコンゴ難民の中には、家族を目の前で殺された、毎夜ジャングルの中で隠れて怯えて眠らなければならなかった女性や幼い子どもたち、命からがら逃げた際に家族と離ればなれになってしまった、レイプされた、拷問をされた、そうした経験を経て難民となった方がたくさんいます。

こうしたことは絶対に起こって良いはずはないし、いつ、どこでも、誰にとってもこんなことは起こるべきではないはずです。そうした不条理への憤りと、第三国定住という一つの解決案を提供できるというやりがいが今の仕事をする上での原動力になっているように思います。

©UNHCR

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やりがいを感じる一方で、辛いと感じる時もあります。アフリカにある難民キャンプは辺境に位置していることが多いので、難民にとって厳しい生活環境であることはもちろん、UNHCR職員やその家族にとっても負担の大きい勤務地です。私自身もナイロビ赴任の前には、タンザニアのンガラとキゴマという国境沿いの地域で働きました。キゴマには2年ほどいましたが、この時私には乳児がおり、水・電気がしょっちゅう止まり、紙おむつや粉ミルクの入手も不安定な環境での初めての子育ては苦労の連続でした。

アフリカの難民の多くは子だくさんです。子どもを愛する気持ちはどの国の母も同じ。わが子を亡くしたり、子どもが行方不明で今生きているのかさえわからない沢山の難民のお母さんたちの話を聞くと痛みを感じます。それでも自分たちをふるい立たせ、残った家族を守って生きてきた/生きている、その強さに敬意を感じずにはいられません。極限におかれ、地獄を見たあとの、人間の強さを体現している難民、あるいはその経験を引きずったまま生きている難民に接することで、今この同じ時代に生きている自分たちに出来ることはなんだろうと考えさせられます。

「愛(Love)の反対は無関心(Indifference)」というマザーテレサの言葉があります。日本にいればアフリカの難民問題は遠いかもしれない。でも、関心を持ってください。今この地球の上で起きていることについて知ることが、未来の地球のあるべき姿を想像する第一歩になると思うので。

 

【TICADVにむけて日本に期待すること】
日本とアフリカは地理的には離れていますが、TICADを通してアフリカの開発に日本が関わってきたことは素晴らしいことだと思います。国の中で迫害や差別が続く以上、その国の真の平和と繁栄は達成できないように思います。開発案を計画する際には、人権保護の問題を併せて考えることが必要だと思います。

(2013年5月23日)