ミュージシャン、俳優として活躍するUNHCR親善大使のMIYAVIが、バングラデシュ南東部コックスバザールでロヒンギャ難民の子どもたちと交流しました。今回のロヒンギャ難民キャンプ訪問は、2018年2月に続いて2回目となります。
2017年8月25日以降、ミャンマーのラカイン州で発生した武力衝突を受け、74万人を超えるロヒンギャ難民がバングラデシュに逃れてきました。その大半が女性と子ども、55パーセント以上が18歳未満の子どもです。1990年代に幾度となく流入したロヒンギャ難民の強制移動と合わせると、現在90万人を超えるロヒンギャ難民がコックスバザールに暮らしています。
MIYAVIは2017年8月以降、ふるさとを追われ逃れてきたロヒンギャ難民を寛容に支援してきた地元コミュニティに感謝の意を伝えました。
「キャンプを2度訪れることで、点ではなく線として、何が機能し何ができていないのか、進捗状況が見えてきます。昨年2月の訪問時に比べて、モンスーン対策としての住まいやコミュニティ設備の強化、より効率の良いサポート体制のための登録ID発行、政府が追加で使用を許可した土地の活用やインフラ整備、若い世代のボランティア活動の活発化など、たくさんの進歩を見ることができました。
UNHCRをはじめ多くの機関は、難民だけではなく、地元コミュニティも支援しています。地元コミュニティは自分たちの持っている土地や資源を共有し、多くの難民の生活を支えています。一つひとつのサポートを通じて届いた温かさを通じて、難民が人として持つべき尊厳と希望を取り戻し、また、未来に向けて前を向いて歩き出す一歩の後押しになっていると強く感じます」
MIYAVIはコックスバザールに1990年代からあるクトゥパロン居住区の小学校と、2017年以降に新たに設立されたラーニングセンターで、ロヒンギャ難民の子どもたちと会いました。現在、支援団体によって運営されているラーニングセンターでは非正規の教育しか認められておらず、ロヒンギャ難民の子どもたちは英語、算数、ビルマ語などの基礎科目を学んでいます。
「避難してすぐの緊急フェーズを乗り越え、今度は、どうやって暮らしていくのか-。そこで親たちが危惧するのは、教育です。子どもたちにどういった教育を与えてあげられるのか、子を思い心配する気持ちは先進国に住む僕たち親とまったく同じ、世界共通です。子どもたちがより良い教育の環境で、シェアすることの大切さ、環境を守るモラルなどを学ぶことは、難民コミュニティだけでなく世界中どこでも重要で、僕たちの未来への投資でもあります。
教育を通じた正しい指導は、人間として生きる知恵や力を与えてくれます。彼らが、将来自分たちの足で歩いていくため、そして、いずれ安全に帰還できたその時のためにも、今、早い段階で質の良い教育の環境を整えてあげることが、彼らにとっても、ミャンマーにとっても、とても大事なことだと感じています」
前回の訪問時はまさに緊急対応の真っただ中で、支援体制が立ち上がったばかりでした。MIYAVIは今回の再訪を通じて、緊急対応後の支援がどのように進んでいるか、自身の目で確かめに来ました。
「こうしてロヒンギャ難民の皆さんと再会できて本当にうれしく思います。前回の訪問時と比べて、難民キャンプの状況はかなり改善していると感じました。その一方で、ふるさとがすぐそこに見える距離にありながらも、なかなか帰るめどがたたないことに対しての不安もひしひしと感じました。次に何が起こるのか、どうなるのかわからない。その不安の大きさは計り知れません。ふるさとであるミャンマーの山々は、手が届きそうなくらいすぐそこにあるのに、届かない。まだ帰れない。まだまだふるさとの現状は帰れるほど改善されていないことは分かっているのです」
MIYAVIは、ロヒンギャ難民の未来に向けた解決策が一刻も早く見出されることを望んでいます。
「次に何をすべきかは明らか。今求められているのは、根本的な解決を推し進めるリーダーシップです。当事国だけではなく、国連および先進国、近隣諸国、もちろんUNHCRも問題解決に向けて努力を続けます」
MIYAVIは、平和への祈りを込めて作った新曲『Hands to Hold』を難民の子どもたちと一緒に歌い、日本の支援によるサッカー用具の贈呈式に出席後、子どもたちとサッカーを楽しみました。
「僕たちはみんな、夢中になれるものがある時、希望を持てる。キャンプにいる子どもたちも、日本をはじめ先進国で暮らす子どもたちと同じように、キラキラ目を輝かせながら、サッカーボールを追いかけています。音楽、スポーツ、アート、何だっていいんです。彼らに生きることにワクワクできるきっかけを与えてあげることも、僕たち大人ができることの一つだと思います。
僕は心から、いつも困難な状況にあるにもかかわらず、たくましく生きる難民の皆さんに感銘を受けます。ここクトゥパロンのキャンプにおいても、橋、シェルター、道路などの建設、植林に必要な作業のほとんどは、キャンプに住む人たちの手で行われています。お年寄りが集まり、交流するためのスペースを、若い男性のグループが灼熱の太陽の下でボランティアとして汗を流しながら作っていました。みんなが力を合わせて精一杯生き抜いています」
6月16日、MIYAVIは日没後の様子を視察するために、夜間の難民キャンプを訪れました。「今回、はじめて夜のキャンプへも訪問させてもらい、昼には見られない光景にただ目を奪われました。太陽光発電による外灯などの導入は進められているものの、キャンプ全体はまだまだ暗い状況。特に女性や子どもたちが、夜に屋外の共同トイレに行くのがいかに大変か。モンスーンなど雨天の時はさらに危険な状態になります。もっともっと明かりが必要です。すでにUNHCR は多くの機関と共にさまざまな取り組みを行っていますが、もっとできることは必ずあるはず。ここで僕たち一人ひとりの知恵やアイデア、実行力が必要になってきます」。
コックスバザールでの夜間の難民キャンプ訪問は、UNHCRの親善大使としては初めて。「やはり、一面を見るだけではなかなか見えてこない実態があります。夜のキャンプ訪問を通じて、難民の皆さんのリアルな生活を見たかった。彼らが何を感じているのか、何に直面しているのか、そして何を必要としているのか。これからもUNHCR親善大使として、難民問題に関する知識を深め、僕自身ができることを見つけ、発信しながらみんなと共有していきたいと思います」。
2019年、UNHCRはミャンマーの武力衝突から逃れてきたロヒンギャ難民のニーズに応えるために3億760万米ドルの活動資金を必要としています。