【職員インタビュー】 帯刀 豊 元アフガニスタン事務所 保護官

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帯刀 豊(たてわきゆたか) 元アフガニスタン事務所 保護官

 

<これまでの仕事>

これまでインド、スーダン、イラク、アフガニスタンで難民保護官として活動をしてきました。インドでは都市難民の保護、スーダンでは難民キャンプにおける法的保護、生活支援に携わりました。昨年12月まで活動していたアフガニスタンでは国内避難民とアフガニスタンへ帰還してきた難民への支援を行ないました。治安は良くありませんでしたが、毎日のように国内避難民や難民のもとへ足を運びました。アフガニスタンで支援をしていて感じたのは、緊急の人道支援と同時により長期的な開発も行う重要性です。特に帰還したばかりの難民の生活は不安定で、日々の生き残りのための支援と平行して、より安定した生活に向けての基盤作りが求められます。

<難民保護に関わりたいと思ったきっかけ>

学生時代に当たり前だと思っていた「国」というものが、人為的に出来たものであることを知り、「国境を越える問題」に興味を持ちました。国際金融への興味にはじまり、その後国境を越える人の動きに興味が移っていきました。またその背景には、幼い頃観て衝撃を受けたTVドラマ『ルーツ(Roots) 』もあるかもしれません。「人にとって故郷とは、故郷への想いとは何であるのか」について考えたことが、今でも難民に向き合う自分の中で活きています。

<大変なこと>

大変なのは現地スタッフ、また難民や避難民と信頼関係を築くことです。信頼に基づくチームワークやパートナーシップを上手く構築することが、活動を進める上での鍵にもなります。また家族と離れて活動している時は、やはりつらいと感じます。

<この仕事に求められる素質>

国連機関に限りませんが、どの職場でも周りとの信頼関係を築きながら仕事をしていくことが基礎になると感じます。加えて、UNHCRの職員として活動する上では「柔軟性」が特に大事です。なぜなら、全く同じオペレーションというものは一つもないからです。その際、自分から仕事を見つけて試行錯誤しながら動く「積極性」が求められます。そして最後に「共感する力」。異なる立場に置かれた相手を理解しようとする気持ちがあるかないかで、難民への接し方にも大きな違いができます。

<好きな言葉>

”神は細部に宿る” -字としてのデータだけではなく、その裏にある「人」をしっかりと見たいと常に考えています。コミュニティを支援するときは、自分がしっかりとその中に入って丁寧に状況を把握した上で、それを活動につなげていきたいと考えています。
“Stay hungry, Stay foolish.”  (Steve Jobs)
何事も試してみないとわからない。自らの価値観を指針とし、現状に甘んじない精神を大事にしたいです。

アフガニスタンの村のリーダーらと話し合いをする帯刀さん ©UNHCR

 

<今後の夢>

帰還に向けた支援活動に携わることです。これまで苦渋に満ちた国内避難民や難民の顔に接することも多かったので、これからは彼等の「帰還」に立会い、その顔に笑顔を作っていけたらと思っています。また、少数民族の文化、暮らしの保全、彼等のルーツを尊重した保護のあり方という視点を、難民保護に活かしていけたらと考えています。

<日本の皆さんへメッセージ>

難民は弱い人ではなく、より良く生きるために闘っている人。私たちの役目は弱い人を助けるというよりも、闘っている人を励ますことなのではないかと感じます。病気や怪我にも負けず通勤・通学に頑張っている人に電車で席をゆずるような、身近で前向きな感覚で、難民についても思いを寄せて欲しいと思います。

 

帯刀 豊

1992年一橋大学法学部卒業。東京銀行入社の後、外務省経済協力局出向、アジア経済研究所開発スクールを経て、エジンバラ大学でMaster of Law(LL.M.)、オックスフォード大学でForced Migration(Masters)取得。旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷勤務を経て、2003年よりUNHCR職員。

(2013年6月14日)