難民条約が採択された理由
第二次世界大戦後の1948年、「世界人権宣言」が採択され、この中で、庇護を求める権利とすべての人間は差別されずに基本的人権を享受することが確認されました。
第二次大戦後、国連加盟国の間で、難民問題、特に難民の基本的人権保障に対する意識が高まりました。第一次大戦後に採択されていた特定の難民に関する協定は適用範囲が限られており、第二次大戦によって急増した難民へ緊急保護の必要性や加盟国の関心事を満たすには十分とはいえないものでした。
こうした理由や、難民問題がいまや世界的な問題となったこと、難民の保護を保障し、問題を解決するためには、国際的な協調と団結が非常に大切であるという認識に基づいて、1951年7月に開催された外交会議で「難民の地位に関する条約」が採択されました。
1967年1月31日に採択された「難民の地位に関する議定書」は、1951年の条約にあった地理的・時間的制約を取り除いたもので、通常、この二つをあわせて「難民条約」といいます。
難民条約が重要な理由
1951年の条約と1967年の議定書は、難民の法的地位について一般的基準を規定するものとしては、今のところ最も包括的なものであり、難民の取り扱いに関する最低限の人道的基準を設定しています。難民のための国際的協調と団結を強め、庇護を提供する場合に、政治的な理由で難民認定の基準を変更することがないように決められています。
1951年難民条約の内容
1951年難民条約の第1条で、難民とは「人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けられない者またはそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者」と定義されています。
また、同条では難民が難民ではなくなった場合の規定や、当該個人が、平和に対する犯罪、戦争犯罪及び人道に対する犯罪や、難民として避難国へ入国することが許可される前に避難国の外で重大な犯罪(政治犯罪を除く)を行った場合には、難民条約が適用されないことを規定しています。
難民条約には、難民の権利や義務についての規定があります。その中でも特に強く保障されているものとして
- 難民を彼らの生命や自由が脅威にさらされるおそれのある国へ強制的に追放したり、帰還させてはいけない(難民条約第33条、「ノン・ルフールマンの原則」)
- 庇護申請国へ不法入国しまた不法にいることを理由として、難民を罰してはいけない(難民条約第31条)
という決まり事があります。どちらも難民に保護を保障し、生命の安全を確保するための大切な決まりです。