好きなことを仕事に~日本で見つけたネイリストの道

ネイルサロン「アルーシャ」で働くノンノンさんと代表の岩瀬香奈子さん(左)
© UNHCR/Aiko M

東京・神谷町駅近くにあるビルの1室。ドアを上げると、色あざやかなネイルアートのサンプルが目に飛び込んできます。

「こんにちは、いらっしゃいませ!」

そう笑顔で迎えてくれたのは、ネイリストのノンノンさん。ネイルサロン「アルーシャ」の看板ネイリストです。

今年の5月15日で9周年を迎えたアルーシャ。店名の由来はタンザニアにある都市の名前。代表の岩瀬香奈子さんが、タンザニアでマイクロファイナンスに関わっている方と出会ったことが、自身で事業を始めるきっかけの一つだったからです。

日本で暮らしている外国人の助けになりたい-。

自分には何ができるのか、アイデアをめぐらせていた岩瀬さん。「たとえば、エスニックレストランはそう頻繁に行きませんよね。持続可能であることが大切なので、もっと人の生活に密着したことがしたかったんです」。そこで思いついたのがネイルサロン。日本でも流行していたタイミングでした。

「アメリカや香港に旅行で行った時、ネイリストが外国人というお店がたくさんありました。日本に難民が多くいることを知り、彼らの自立に向けた一歩をお手伝いできればと思いました」

日本では誰もやったことがなかった試み。最初はさぞかし大変だったのでは・・・と思いきや、「私自身が大変ということはなかったのですが、スタッフは日本の文化に慣れるのに苦労していました。時間を守るとか、お客様への対応とか、日本では“当たり前”が身につくのは時間がかかる。みんながんばったと思います」と、岩瀬さんは笑顔で語ります。

研修でネイルアートの技術と日本語を学び、一定の基準に達したらアルーシャのネイリストとしてデビュー。その一人がノンノンさんです。

ノンノンさんは今から25年以上前、故郷のミャンマーで民主化運動に参加。仲間が逮捕され、身に危険を感じたノンノンさんは、最初は隣国のタイに、その後日本に逃れてきました。「飲食業や他の仕事もしましたが、体を壊してしまいました。そこで見つけたのが、難民ネイリストの募集だったんです」。もともとネイルアートに興味を持っていたノンノンさんは、これこそ自分の居場所かもしれないと、懸命に技術を磨きました。

常連客の1人、日本語教師をしている西村美保さんは、スタッフへの日本語研修を通じてアルーシャを知りました。「技術はもちろん、人柄や気遣いが素晴らしく、ファンになって通っています」。

ノンノンさんは「完成したネイルを見て喜んでくれるのが何よりもうれしい。お客さんに人生相談されたり、私が悩みを相談することも。仕事が本当に楽しくて、日本語能力もアップしました」と生き生きと語ります。

オフィス街にあるお店には、毎日いろいろな人が足を運びます。近くの会社で働く女性が「1時間以内でできるものをお願い!」と昼休みに駆け込んでくることもあれば、「東京に旅行にきたら絶対に来たいと思っていた」という若者も。最初は「難民支援になれば」と訪れる人も多いそうですが、西村さんのように、ネイリストの技術にほれ込んで常連客になる人も少なくないそうです。

ノンノンさんは自分のように、好きなことを仕事にできることは幸せだと話します。ミャンマーといえば辛い料理が有名ですが、実は辛いものは苦手だとか。「日本料理は体にもいいし大好き。神様が私を日本に導いてくれたのかもしれませんね」。

「将来は自分の店を持ちたい」と、目を輝かせながら夢を語ってくれました。

 

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オープンから9年、アルーシャのストーリを動画でもご覧ください!