みんなで苦しみを乗り越える ロヒンギャ難民の子どもたち

プログラムに参加するロヒンギャ難民の子どもたちと話すフィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官 
© UNHCR/Will Swanson

バングラデシュ南東部のコックスバザール。ミャンマーから家族と逃れてきた12歳から17歳の子どもたちが、大きな輪になって踊っています。UNHCRが運営する子どものためのメンタルヘルスプログラムの一コマです。

ダンスや運動、質問タイムなどを通じて、避難先で感じている不安や寂しさを共有。リーダーは子ども自身。自分の気持ちを素直に表現できるよう、心のケアに配慮したプログラムです。

リーダーの少年アブドゥル(16)は、「僕たちは助けを求めることを“弱さ”だと思って、自分の気持ちを隠そうとしていた。今はみんなで助け合えるようになりました」と話します。不安や悲しみが日常となり、心を閉ざしてしまっていた子どもたち。「夜になると、そばにお父さんがいる気がする。ちゃんと学校に行っているか、確認しに来るんだ」。アブドゥル自身も、9カ月前に父親を亡くしました。

コックスバザールでは、教育の機会も閉ざされたままです。UNHCRの担当者は、“失われた世代”が生まれることに危機感を感じています。正規の教育施設はなく、小学校1、2年より上になると学びの場すらありません。子どもたちの不満は募るばかりです。

また、モンスーンの季節の到来に伴い、サイクロンによる危険にも直面しています。難民の有志ボランティアは、丘の斜面など危険な場所に住む難民の家を訪ね、サイクロン到来への注意喚起を行っていますが、自分の家を離れようとしない人も多いといいます。

ロヒンギャ難民の男性たちはサイクロンの備えとして、レンガやモルタルの壁で家の周りを補強。しかし、複雑な思いもあります。サイクロン対策によって、仕事、収入を得られているからです。

コックスバザールの難民居住地では、危機に備えて、さまざまな準備が進められています。しかし、予測できる危機は氷山の一角。多くの人が仕事に就けず、子どもたちが教育を受けられていないなど、課題は山積しています。

「うわべの安定は多くの問題を生む」と強調するフィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官。「危機が過ぎれば世界はロヒンギャ難民を忘れてしまう。しかし私たちは、彼らから学び、彼ら自身が未来を築く機会をつくることが重要なのです」。

 

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