日本の難民保護と日本で暮らす難民
1978年、新体制下での迫害を恐れ、ベトナム、カンボジア、ラオスより多くのインドシナ難民が日本に避難したことを踏まえて、翌年に開始された日本政府の受け入れ事業により、2006年の事業終了までの間に、約11,000人のインドシナ難民が受け入れられました。その多くは神奈川、埼玉、兵庫などの地域に定住していています。このように日本は難民政策において、30年以上の歴史を持っているのです。
1981年に難民条約に加入後、翌年82年に出入国管理及び難民認定法が整備され、近年にかけて重要な修正が加えられてきました。日本で難民申請を希望する者は、法務省入国管理局に登録し、入国審査官による審査などを経て条約難民として認定されます。不認定の場合も異議申立てが認められ、その場合は難民審査参与員を中心に再度審査されます。異議の審査後、不認定の場合は裁判所による見直しを求めることも可能です。
条約難民として認定されると在留資格と法令の範囲内で権利と公共サービスの利用が認められますが、認定されない場合でも、人道的配慮などによる一定の保護、例えば在留資格と就労許可の付与、国民健康保険などのサービスを受けられるケースも増えています。
一方で、難民申請の結果を待つ間、申請者の一部は適法に働くことができず、一部は生活・住居費など政府による支援を受けざるを得ないでいます。病気の際、まず医療費を自費でまかない、後日、支援機関による払い戻しを待たなければならないという厳しい現状があります。また日本語学習プログラムの多くは難民認定された人のみを対象としていることなどから、難民申請者の日本語を学習する機会も限られています。
難民申請手続きは短くても数か月、また再申請や裁判所での審査を含めると何年もかかることもあり、収容という問題がでてきます。これは日本で不法に滞在(不法入国やオーバーステイ)する難民申請者にあてはまります。収容の有無は、当人の在留資格、難民申請する前の日本での在留期間、逃亡の恐れや保証人等の有無などが問題となるが、収容された場合、申請期間はさらに長期化することがあります。
しかし、このように難民申請者に関する社会的・法的側面の課題が指摘されつつも、近年、日本の難民認定制度は、政府や市民社会の包括的な取り組みによって、継続的に改善されています。また2010年度から3年間で90名のミャンマー難民を受け入れる、アジア初となる「第三国定住」※プログラムは国際的にも大きな意味を持つものとしてだけでなく、アジア地域における難民政策にも良い影響を与えるものとして注目を集めています。
※「第三国定住」とは…
本国への帰還が難しく、第三国に再定住することが難民にとって、唯一の安全かつ実行可能な解決策となる場合「第三国定住」は、長期化する難民の状況に対する「恒久的解決策」の一つとなる。UNHCRでは新たな国での生活再建への支援を行っている。
「日本へようこそ、アジアで初めてとなる第三国定住プログラムが始まる」
日本での難民認定申請について
日本は1951年の難民条約及び1967年の難民の地位に関する議定書の締約国ですので、日本国内においては日本政府に難民の認定をする正当な権限があります。よって、日本において保護を求める場合、法務省入国管理局に対して難民認定の申請をすることになります。難民認定の申請書を入国管理局に提出された方は通常、入国審査官(難民調査官)との面接をうけることとなります。面接の後、難民認定の可否が通知されます。
難民と認定された場合
難民申請の結果、日本政府によって難民認定を受けた方には、更新可能な1~3年の定住者としての在留資格が与えられます。難民と認められた方は国民健康保険加入を申請することができ、必要があれば市・区役所など通じて福祉支援を受けることができます。また、政府の委託を受けた財団法人アジア福祉教育財団難民事業本部が、難民と認められた方が日本で安定した生活ができるよう、日本語教育・日本での生活オリエンテーション、職業斡旋を含む定住支援プログラムを提供しています。
不認定となった場合(異議申立てをする権利)
難民申請が不認定となってしまった場合、入国管理局に再度の審査を申し立てることができます(異議申立て)。この場合、不認定の通知を受けてから7日以内に申請しなければなりません。この申立ても退けられますと、さらなる審査が裁判所で可能となります。この場合、異議の申立てが退けられてから 6ヶ月以内に裁判所に訴えを提起しなければなりません。
その他の保護:人道的配慮による在留特別許可
法務省からは難民の地位の他に、人道配慮による在留特別許可を付与されることがあります。このような許可は、難民の基準は満たしていないものの、戦争や国内紛争など難民と同様にやむを得ない理由で出身国に帰ることができない者に与えられることがあります。