コミュニティセンター、レバノンにいる難民の希望の場に


© UNHCR/Dalia Khamissy

ベッカー、レバノン  2017年11月

2011年にシリアで紛争が始まって以来、100万人以上の人々がレバノンへ逃れました。そのため、最も弱い立場にある人々を特定し、支援するためのアウトリーチ活動や地域的な取り組みなど、幅広い支援の提供が求められています。日本のような寛容なドナーからの資金で、UNHCRは、難民が学び、コミュニケーションをとり、くつろいで、経験を分け合える、安全な場所を提供するため、レバノン国内にあるコミュニティセンターを支援しています。

レバノンのベッカー地方でのある気持ちのいい秋の日、シリア人の子どもたちが教室に集まってアニメのトム&ジェリーを見ています。一見彼らは普通の子どもたちのように見えますが、これは単なる教室ではありません。

この特別な教室にいるシリア人の子どもたちは、家族の助けになろうと一日のほとんどをレバノンの路上で働いて過ごす”ストリートチルドレン”です。30分ほど前、子どもたちは児童婚についての授業を受けていました。

「難しいトピックですが、彼らに話すことはとても大切です」と、マルジコミュニティセンターで2年間教えているアヤットさんは言います。

「彼らに保健衛生や個人の安全、路上でどのように身を守るか、そして暴力にさらされた場合にどうしたらよいかを教えています。正しいことと間違っていることをどう見分けるか、そしていかに暴力が受け入れられないものかも教えています」

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コミュニティセンター(Community Development Centres: CDCs)はトレーニング、学習活動、啓発活動や心理的サポートなどの様々なサービスを提供しています。これらのサービスは難民だけでなく、コミュニティセンターを訪れたいというレバノン人も利用が可能です。

UNHCRのパートナーであるINTERSOSが運営する、マルジのコミュニティセンターへ来る子どもたちは基礎的な読み書きも勉強します。自分の名前をどのようにアラビア語や英語で書くのか、道路標識をどう読むのかも学べるのです。

「子どもたちが初めてここへ来たときは、座ってじっとしていることすらできず、完全なカオス状態でした。少しずつ学んで、今では大きく変わりました」と、センターのシニアソーシャルワーカーのハニーネ・タハさんは言います。「ここは安全なスペースです。多くの子どもたちは親に自分たちは路上で物を売ってくると言って家を出て、ここへ来ています」

マルジコミュニティセンターは日本政府が支援している、ベッカー地方にある3つのセンターのうちのひとつです。日本からの支援のおかげで、UNHCRはコミュニティセンターやレバノンで行われているほかの地域的な取り組みを通して、難民の保護と支援を続けることができています。これらの活動は2017年に最大27,000人もの難民の助けとなり、10歳のドーアもそのうちの一人です。

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シリアのホムス出身のドーア、かつてはマルジコミュニティセンターに裸足で破れた服を着て通っていました。ドーアの姉は12歳ですでに結婚していましたが、ドーアはコミュニティセンターの先生であるアヤットを信用し、強い関係性を構築し、コミュニティセンターへ通いたいと主張しました。

「ドーアはここにいる最も賢い女の子の一人で、このセンターに参加してから大きく変わりました」アヤットは女性への教育を広めようとしていますが、「たとえ10人のうち1人でも学校へ通えば、私たちにとっては大きな成功です」と語っています。

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別の教室では、10歳のラナが英語での数字の書き方を学んでいます。「勉強するのが大好き!そしてここでの先生たちの私への接し方が好きなの」と、シリアのアレッポから逃げてきたラナは言います。「貧しい人や病気の人を助けられるように将来医者になりたいのです」と夢を語っています。

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ラナはマルジコミュニティセンターで、13歳の兄カリルと一緒に6ヶ月間授業を受けてきました。「もし道に迷ったとしても、今ならもう道路標識を読んで家へ帰る道がわかるよ」とカリルは言います。

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こうした子どもたちや、ほかの何千人もの難民やレバノンの人々は、安全な場所があり、新しいスキルを学んだり、また彼らの置かれた厳しい状況の中で少しでも安らぎを得ることのできる活動に参加することができます。これはUNHCRの最大のドナー国のひとつである日本などからの力強い支援によって可能となりました。

コミュニティセンターを訪れる多くの難民は6年近くレバノンで避難生活を送っており、安全に帰国できるよう、いつかシリアの情勢が改善するのを待ち続けています。

「難民が待ち続けているこの長い間、生き残るだけでなく、一人一人が豊か生活を送り、一時的に追放された時間を有効に使い、人的資本やどこででも働けるような技術を磨くことがとても重要です」とUNHCRの難民保護責任者である駐レバノン副代表キャロリナ・リンドホルム・ビリングは言います。「コミュニティセンターは、そうしたことを可能にする環境を提供しているのです」