キャロルのストーリー
キャロルのストーリー:中央アフリカ共和国より
「私たちの村は、周囲の渓谷が見える丘のふもとにありました。」29歳のキャロル・モンセンは語ります。「果物が豊富になる木に囲まれ、金の採れる土壌に恵まれていました。鐘や高い塔が立ち並び、私たちは平和に暮らしていました。 あの冬のあの日までは。いつもは楽しげな子どもたちであふれる村が死体で埋めつくされました。赤十字が死体の処理に来るまでに1週間ほどかかりました。」
セレカの軍隊が、首都から260キロほど離れたキャロルの住む村を襲撃したのは2013年2月の早朝。キャロルの家族はみな深い眠りの中でした。その日も子どもたちは学校へ、キャロルは仕事へと、いつもと同じ日常が始まるはずだったのです。しかしそれは銃声と共に恐怖へと変わりました。村は軍隊に包囲されましたが、キャロルと子どもたちは茂みの中に隠れて難を逃れました。
「襲撃から5日後に戻って目にしたのは、完全に焼き払われた家でした。お金も食べるものもなく、さらに夫は連れ去られてしまったのです。セレカに夫を帰してくれるよう懇願しましたが、まるで聞く耳を持ちません。なすすべもなく一番幼い子どもを抱きかかえ、近隣の住人からパンを分けてもらいに行きました。その後首都バンギをめざし徒歩で避難することにしましたが、あれほどの悲しみを味わったことはありません。」
一家はやがてドン・ボスコにある国内避難民キャンプに辿り着き、そこで生活支援物資や医療支援を受けることができました。しかしキャロルの夫が家族の元へ戻り、再び自立して生活が出来るようになるまで、真の平和が訪れることはないとキャロルは話します。
「本当の意味での平和を実現するための方法はひとつ。 紛争に関わった人全員が自らの過ちに気付き、そしてお互いを許しあうことです。」