Vol.1 実の里@高田馬場 ミャンマー少数民族の文化を日本に【閉店】

お店は西早稲田駅から徒歩5分  ©UNHCR/C.Imaizumi

「旅するキッチン」記念すべき一回目の旅先はミャンマーです!

日本最大のミャンマー人コミュニティが存在する高田馬場。今回訪れたミャンマー少数民族料理の「実の里」は、西早稲田駅から歩くこと約5分のところにあります。店主のマリップ・セン・ブさんは、ご出身のカチン族の文化を広めるために2011年に「実の里」をオープンしました。*現在店名はミャンマー少数民族料理 タンヨージン

店主のマリップさん  ©UNHCR/C.Imaizumi

ミャンマー少数民族カチン族出身のマリップさんが営む「実の里」は、多彩な少数民族の味を東京でいただける数少ないお店の一つです。

お店のイチオシ!カチン丼

カチン丼(580円)  ©UNHCR/C.Imaizumi

実の里の看板メニュー、カチン丼(580円)は早稲田の商店街が主催する早稲田地球感謝祭で行なわれた「早稲田飯コンテスト」で優勝した実力派です。ボリューム満点でお値段もなんと580円とお手頃。お金は無いけどお腹は空く!そんな学生が多い高田馬場にぴったりの料理です。

カチン丼とは、カチン州の郷土料理のカチンチェという各種のスパイスで炒めたひき肉をご飯に乗せたシンプルな一品。油を多用することでも知られるミャンマー料理ですが、このカチン丼はさっぱりしていて食べやすく、セットの鶏がらスープとの相性も抜群です。

豚肉と牛肉を混ぜる割合は家族にも教えないという、まさに秘伝のレシピ!ぜひ試してみたい一品ですね。

カチン州について―

ミャンマー北部に位置するカチン州は東南アジア屈指の山岳地帯で、主要な川が合流する自然豊かな地域です。カチン州にはカチン民族という少数民族が住んでいますが、国軍と独立軍の対立によって多くが難民となり国内外に避難しています。

中国、インドと国境を接していることもあり、カチン料理は様々な文化の影響を受けています。東南アジア独特の辛い味付けだけでなく、里芋、タケノコ、山菜などの日本でもなじみの深い食材を使い、親しみやすくどこか懐かしい味付けが特徴。また、ニンニクやしょうがなど体によい食材を多用することから薬膳料理としても知られています。

シェフのおすすめ!カレン風焼きそばと実の里ポテトサラダ

カレン風焼きそば(700円)  ©UNHCR/C.Imaizumi

「実の里」はオープン当初はカチン族の料理を中心に提供していましたが、現在はメニューも増え、様々な少数民族の料理が楽しめます。

今回調理をしてくださった料理長のソーさんのご出身でもあるカレン州のお料理、カレン風焼きそば(700円)は「実の里」でいただける少数民族の料理のひとつ。海老とさざえを贅沢に使った海の香りがいっぱいの塩焼きそばです。カレン州は海にも近く、国内最大の湖があるため、料理には魚介類を使ったものがたくさん。野菜もたっぷりで、日本人に食べやすい優しい味です。

料理長のソーさん  ©UNHCR/C.Imaizumi

そしてもうひとつのおすすめ、オリジナルメニューの「実の里ポテトサラダ(380円)」はビールのお供に最適です。ポテトサラダとは言っても、日本のものとは少し違います。マヨネーズは使わず、蒸したジャガイモに砕いた揚げにんにくと水菜と塩を加えるだけ!シンプルな料理ですが、レモンのスライスが食欲を刺激する、くせになる味です。お店に来たらまず注文したい一品です。

実の里ポテトサラダ(380円) ©UNHCR/C.Imaizumi

ミャンマー料理の代表格

モヒンガー(700円)は定番のミャンマー料理です。ミャンマーの女の子は美味しいモヒンガーがつくれないとお嫁にいけないと言われるほどの代表的な家庭料理です。朝食として食べられることが多いモヒンガーは、忙しい朝でもすばやく食べられるように、麺を細かく切ってスープと一緒にかき込んでしまう食べ方が昔からのスタイルなんだとか。黄色いスープに使われているのはウコンやパプリカなど体によさそうなものばかりです。

モヒンガー(700円)  ©UNHCR/C.Imaizumi

南北に長いミャンマーの国土は日本の約二倍。日本では味噌汁の味が地域によって違うように、モヒンガーの味付けも全く違うといいます。ダシに使う魚の種類が異なるスープは南部ではあっさり味付けで、北部ではこってり濃厚。やっぱり故郷の味が一番と、ふるさとの味を求めるお客さんから色々と注文が絶えないそうです。

ヒンはビルマ語で「おかず」という意味の煮込み料理。モヒンガーと同じく、ミャンマー全土で食べられるお料理です。インドのカレーのようにスパイスをたくさん使用しますが、辛さはマイルド。写真は鶏肉とヒヨコマメのヒン(850円)。ヒヨコマメは栄養価も高く、ミャンマーの食卓において大事な食材の一つです。

鶏肉とヒヨコマメのヒン(850円)ヒンにつけて頂くのがパラタ。もちもちの食感がたまりません
©UNHCR/C.Imaizumi

「愛する母国の味を日本人にも知ってもらいたい。」
―そんな思いを語ってくれたのは店主のマリップ・センブさん。

ミャンマーの少数民族が描かれた布と  ©UNHCR/C.Imaizumi

日本人は食べ物に関心が高く、感受性も豊か。東京では世界各国の料理を試す機会があり、多彩なミャンマーの少数民族の料理はきっと受け入れてもらえるはずだと確信したそうです。

それまでマリップさんは同じ高田馬場で焼肉店を経営する弟さんの手伝いをしていましたが、2011年に独立。料理という切り口でより多くの人にミャンマーの文化を知ってもらいたい、という思いを胸に「実の里」をオープンさせました。カチン料理だけでなくミャンマーの少数民族全ての料理を提供したいと意気込みを語ってくれました。

「お客さんが料理を一口残さず食べてくれた時が一番うれしい。美味しかったという一言よりも気持ちが伝わりますね。」と笑顔で話すマリップさん。

そんなマリップさんは、日本に住むミャンマー少数民族の人びとを支援するNPOで活動しています。ミャンマーの少数民族と日本の架け橋となるべく忙しい日々を送っています。

新作メニュー

「実の里」ではソーさんが腕を振るう季節限定のメニューもご用意しています。

豚串三種盛り(580円)  ©UNHCR/C.Imaizumi

秋の新作メニュー、豚串三種盛り(580円)はタン・乳肉・テッポウという珍しい豚肉の部位をスウィートチリソースと、さわやかな酸味と甘みのプラムソースで。

他にも看板メニューのカチン丼のお肉を使用した創作メニュー「実の里手羽先餃子(400円)」やピリッと辛い唐辛子がアクセントの「鶏肉の唐揚げ(480円)」、「海老のトマトソース煮込み(800円)」など。季節のメニューは期間限定ですが、事前に注文頂ければ期間終了後でも用意出来るものもあるとのこと。ぜひ新しい味にも挑戦してみてください!

落ち着きのある店内 ©UNHCR/C.Imaizumi
店名 タンヨージン
住所・連絡先 新宿区西早稲田2-18-25 横川ビル1F TEL:03-6380-3644
行き方 JR高田馬場駅徒歩10分、西早稲田駅徒歩5分
営業時間 11:30-15:00、17:00-23:00
定休日 日曜

※お店のデータは取材時から変更する場合があります。おでかけの際は事前にご確認ください。

お店のホームページはこちら

(2017年7月追記:お店は閉店いたしました)

取材日:2013年11月