2011年統計報告 : 80万人が国境越えを強いられた

2012年6月19日 

 © UNHCR/B.Bannon
© UNHCR/B.Bannon

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が発表した統計報告書によると、2011年は国境を越えざるを得ず、難民となる人が2000年以来最も多く発生した記録的な年であった。


UNHCRの「2011年グローバル・トレンズ(2011 Global Trends)」報告書によると、2010年暮れにコートジボワールで始まった人道危機が、その後連鎖のようにリビア、ソマリア、スーダンなどに波及し、 新たに世界で430万人が避難を強いられ、うち80万人は、祖国から逃れ、難民となった。


「世界は大規模な悲劇に見舞われた。多くの人が混乱の渦中に直ちに巻きこまれ、大きな被害、甚大な負担を背負った」アントニオ・グテーレス 国連難民高等弁務官が振り返る。「このような人に対して、多くの国境が封鎖されずに、国際的な保護が維持できたことへの安堵を抱きつつも、厳しい状況は続 くため、今後の展開を注視している。」


世界中で4250万人が、難民(1520万人)、国内避難民(2640万人)あるいは庇護申請者(895千人)として避難を強いられた。新 たな流出が増大したにもかかわらず、2010年の全体数4370万人と比較すると減少した。これは、国内避難民の帰還がここ10年で最も多い320万人に のぼったからである。難民の帰還に関しては、2010年よりその数は増えながらも532千人と、ここ10年の中では少ないレベルの3位となる。


10年間の推移に着目すると、統計に不安な傾向が現れていることが注視される。世界中で、避難を強いられる人の規模が、ここ5年、4200 万人超と高い水準にとどまっている。また難民となった人の多くは、何年か難民キャンプや、都市部で、それぞれ不安定な生活を過ごす傾向にある。UNHCR の支援対象者である難民1040万人のうち、7割近くの710万人が、少なくとも5年以上のいわゆる「長期化した難民状態」にあり、難民問題の解決を心待 ちにしている。


総体的に、アフガニスタンが最大の難民発生国であり(270万人)、イラク(140万人)、ソマリア(110万人)、スーダン(50万人)、コンゴ民主共和国(491,000人)と続く。

世界の難民の8割あまりが、近隣諸国 へ避難する傾向にあり、難民受入国の統計にも現れている。最大の受入国はパキスタン(170万人)、イラン(886,500人)、ケニア(566,500人)とチャド(366,500人)である。
先進諸国では、ドイツが571,700人と世界最大数受け入れており、個別の庇護申請に関しては、南アフリカが107,000人と、ここ4年間を通じて最も多く申請を受けている。


UNHCRが活動を始めた当初のマンデートは、難民を保護・支援することであった が、その60年の活動の中で、世界で保護を必要とする国内避難民、国籍を有することによって得られる人権を必要とする無国籍者へ支援の対象が拡大してい る。2011年グローバル・トレンズ報告書には、提出のあった64カ国の無国籍者に関するデータしか記載できなかった。これは、UNHCRが世界で 1200万人と推定する無国籍者のうち、4分の1に過ぎない。


2011年末時点で4250万人の避難を強いられた人のうち、国連パレスチナ難民救済事業機関が、480万人のパレスチナ難民の支援を実施 し、2640万人の国内避難民のうち、1550万人がUNHCRの保護と支援を受ける。UNHCRが支援する2590万人の難民と国内避難民は、2011 年には70万人増えた。


「グローバル・トレンズ」報告書は、UNHCRが毎年発行する世界で避難を強いられる人に関する主たる統計資料である。補足情報は毎年、「統計年鑑」(Statistical Yearbook)に、半年ごとに「先進諸国への庇護申請者数」(asylum applications in industrialized nations)に記される。

 

2011年グローバル・トレンズ(2011 Global Trends)報告書(英語) はこちら


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