東京から電車でおよそ1時間半。車窓から見える風景が、忙しい都会からのどかな山と海の景色に一気に変わります。箱根への玄関口である小田原駅から一駅のJR鴨宮駅から10分ほど歩いた場所にある一軒のレストラン。扉を開けると聞こえてくるのは、ラオス音楽やオーナーの明るい笑い声。どこか懐かしさと温かさを感じるアジアン料理の「Dee」は、地元の人の間で人気です。
ラオス出身のオーナー、関根麻仁(せきね まに)さんは、「小田原の人たちに本場のアジアン料理を伝えたい」という願いからお店をオープンしました。今回は麻仁さんのこだわりがたくさん詰まったお店「Dee」をご紹介します。
お店の扉を開けると、現代的なラオスの建物をイメージした淡い青緑の壁一面に、ラオスの画家が描いた絵や職人さん手作りのタペストリーなどが飾られています。
店内にはテーブル席はもちろん、キッチンを見渡せるカウンター席もあり、珍しい東南アジアの料理道具や食材を見ながら、食事を楽しめます。
普段は、東南アジア料理が大好きな地元の方でお店がにぎわうそうで、その方々のつながりで来店されるお客さんも多いのだとか。ラオス料理のほかにも、タイやベトナムなど東南アジアの様々な料理が楽しめるのも魅力のひとつです。
ラオスはインドシナ半島に位置し、中国、ミャンマー、タイ、カンボジア、ベトナムの5ヶ国と国境を接していて、かつてはフランスの植民地でした。
日本の本州ほどの国土に、様々な民族が住み、独自の文化を育んできました。国土の7割が山岳地帯もしくは高原で、海には面しておらず、食材は肉、野菜そして川魚が多いのも特徴です。ラオスの人々は生野菜を好み、料理の薬味としてハーブや野菜を多く使用することでも有名です。ラオスの食卓には、もち米とスープ、主菜の焼き魚やお肉料理、そして副菜や煮込み料理などが並び、日本人にとっても親しみやすいのが特徴です。
麻仁さんによると、ラオス国内でも地域によって使う食材や味付けなどに特徴があり、たとえば、北部は魚を使ったカレーや料理が多く、南部に行くにつれてココナッツやスパイスの効いた料理が増えます。
さて、「Dee」にはどんな料理があるのでしょう?一品ものはもちろん、お昼限定のランチセットなどもそろえており、お値段もリーズナブルです!たくさんあるメニューの中から、本日は「日替わりセット(1000円税抜)」を頂くことにしました。日替わりセットは毎日料理が変わり、とても人気のあるメニューだそうです。本日のセットにはラオスを代表する3品が付いてきます。
辛さがたまらない!ラオス風パパイヤサラダ:
日本ではあまりなじみのないパパイヤですが、東南アジアでは熟れているパパイヤはもちろん、熟れる前のグリーンパパイヤを野菜として料理に使うのが一般的だそうです。熟れる前のパパイヤはサラダの他にも、煮たり、焼いたりすることもあります。くせがなく、きゅうりのようにあっさりしているのが特徴。一般的にラオス料理は、タイ料理と似ていながらもあまり辛くなく、マイルドなことで知られていますが、このパパイヤサラダはラオス料理の中でもっとも辛い料理として知られています!麻仁さんによると、野菜をとにかくいっぱい食べるラオスの人々にとって、小腹がすいたら「パパイヤサラダ!」というくらい、おやつの定番としても人気な料理なのだそう。
このパパイヤサラダを作るために麻仁さんが取り出したのは、ラオスの伝統的なすり鉢「クロックサーク」。ラオスではこのすり鉢を使ってサラダや和え物を作るのが主流で、他にもドレッシングやカレーペーストを作るために使うそうです。
このすり鉢を使ってにんにくと新鮮な青唐辛子をつぶし、ナンプラー、砂糖、そしてレモンを入れます。最後に切ったパパイヤやきゅうりなどの野菜をすり鉢の中に入れ、軽くあえたら「パパイヤサラダ」の完成です!辛いので、下に引いてある葉物を一緒に食べてみてください。
次の料理は本日のメインのラオス風カレーそうめん「カオプン」:
見た目ほど辛くはなく、薬味として野菜をたっぷりと使っているカレーそうめん。ベースには東南アジアの三大カレーのひとつでもあるレッドカレーのペーストを使い、ココナッツのアクセントが効いたマイルドなチキンカレーです。ラオス国内では、そうめんは温かくして食べるのが主流だそう。添えてある野菜もレモン汁と絡めてあり、酸味とマイルドな辛味が合わさって日本人にもなじみやすい味付けになっています。
カオプンに使われている薬味や香草などは、家庭菜園で麻仁さんのお母様が育てたものを使うこともあるのだとか。ラオスのパクチーは、日本にあるものとは風味が少し異なるそうで、家庭菜園でしか再現できない味もあるのだそうです。
鮮やかな色のデザート:
日替わりランチセット最後のメニューは「タピオカデザート」です。カラフルな見た目のタピオカは、ココナッツミルクにシロップ、ナタデココとココナッツの実を混ぜて作ったものです。日本では見かけない赤いナタデココや加工して固めた緑のココナッツの実などを混ぜたデザートは、辛い物を食べた後の口直しにぴったりです。甘くて冷たい、絶妙な食感のデザートがおいしいランチの締めです!
元々、小さい頃から食べてきたラオス料理やタイ料理をホームパーティーなどで振舞うことが多かった麻仁さんは、友達などに料理を教えていました。それから料理教室を本格的に開催するにつれ、遠くまで食材を仕入れるのが大変になり、自分で仕入れる方法はないかと始めたのがアジアン食材のお店でした。次第に、料理を習うのではなく食べに来たいという要望が増え、お店と一緒にレストランも経営することになったそうです。そのため、料理はもちろん、仕入れる食材にもこだわっています。お店に数多くの食材が並ぶ中、目に留まったのはレジの間の前に置いてあった3個500円という札のついた卵。
この高級卵はなんと有精卵だそうです。ラオスや東南アジアの国々では、ゆでたり、蒸したりした有精卵の中にスイートチリソースなどを入れて食べるそう。麻仁さんは日本では珍しい有精卵を国内の業者さんから仕入れていますが、これもめったに手に入らないそうです。
レストランの横に併設されているアジアン食材売り場では、色のついたナタデココや東南アジア独特のスパイスなどもそろえています。食事を終えてから、気になった食材を買えるのもいいですね。
店内のいたるところにあるフェルトの小物はなんと、麻仁さんの手作りです。一本の針で毛糸を崩し、固めて形にしていくそうで、お客さんに大人気な商品なのだそうです。その他にも、ラオスの職人さんが手作りしたタペストリーや壁に飾られている絵も魅力的です。
麻仁さんはこの日、ラオス織りのスカート姿でした。このラオス織りのスカートはラオスの女性が日常的に着ている代表的なもので、黒ベースのものは仕事や制服などで主に履かれています。明るめの色のスカートはパーティーやよそ行きなどで使用し、麻仁さんが持っているゴールドがアクセントのピンクのスカートは、結婚式やお祝いの席などで履くそうです。このような巻きスカートは日本の着物を連想させる形で作られており、ラオスの女性は生地屋で生地を選んで、オーダーメイドで作ってもらうのが一般的だそう。
ラオスからタイの難民キャンプでの生活を経て日本に来た麻仁さんは、普段から料理教室を開催したり、ラオス舞踊を披露したりと、ラオス文化を通じてコミュニティとの交流を活発に行っています。
日本人にも大人気の観光地でもあるラオス。「Dee」では料理だけでなく、ラオスの雰囲気も充分に味わえます。ぜひ、ラオスを求めて、小田原まで足を運んでみてはいかがでしょうか?
店名 | Deeアジアン食材・キッチン |
住所・連絡先 | 小田原市南鴨宮1-9-22 白金ビル1f-D TEL:0465-42-9139 |
営業時間 | ランチ 11:30-14:00(take out可) ディナー 18:00-21:00 (予約のみ) |
定休日 | 月曜日、第2日曜日 |
お店のデータは取材時から変更する場合があります。おでかけの際は事前にご確認ください。
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取材日:2016年2月