サックス奏者 父親 モーツァルトのファン
「銃弾の飛び交う危険地域から命からがら逃げのびた」
ナダル、41歳:「15の時から音楽と共に生き、ドラム、トランペット、トロンボーンなどを学校のバンドで演奏していました。サックスと出会ってからはサックス一筋で、演奏家になってもう18年も経ちます。
音楽は、家族の次に大事な人生の支えです。妻のラナが妊娠したときは、生まれてくる赤ちゃんの為にモーツァルトを聞かせました。そのおかげか娘アヤも息子アフメッド も歌や踊りが大好きで、時には親子で演奏をすることもあります。アフメッド はいたずら好きで一人にしておくと壁に落書きをしたりします。そんな時母親に似たんだとからかいますが、子どもたちをまっすぐに育ててくれた妻にとても感謝しています。」
ナダルは難民の三世だ。両親は子どものころパレスチナから避難し、彼はシリアのダマスカス で幼少期を過ごした。2011年に紛争が勃発し家族はまた避難を余儀なくされた。娘のアヤが初めて爆撃の音を耳にしたのは彼女が10歳の時だった。「そのとき私は家中の人を起こすくらいの叫び声をあげたわ。」とアヤはは言う。「車に乗り込んだときスナイパーが私たちを狙い撃ちしたの。トランクに銃弾の穴が空いていたのよ。」
ナダル一家は危険が迫るたびに避難を繰り返した。2013年にナダルは単身タイのバンコクへ移り、2ヶ月後に家族も合流した。持ち物は2つのスーツケースとサックスだけだった。ヨーロッパへの再定住が決まった一家は、これで避難生活に終止符を打てるのではと期待している。「ヨーロッパに行ったら学校に行って言葉を覚えるの。友達ができたら私の誕生日会に招待するわ。」とアヤは目を輝かせた。
シリア紛争により国民の半分が避難を余儀なくされ、およそ400万人が難民認定を受けている。
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